
映画『マトリックス』でキーメーカーという人物が登場する。
文字通り鍵を作っている人で、彼の腰にはじゃらじゃらと鍵がぶらさがっている。目の前にあるドアを閉め、鍵を差し込みノブを回すと、別の空間に出ることができる。
マトリックス2で、キーメーカーが主人公たちと一緒に逃げるシーンがある。「つねに反対側へ」はそのときのセリフで、さっきシャワーを浴びているときに急に思い出された。まるで誰かが鍵を開けて部屋に入ってきたように。
「つねに反対側へ」。キーメーカーはそう呟いて、その場から遠く離れるために、ここから反対側へと通じるドアを開く。
僕の生活は、いまあらゆる意味で停滞していた。夢は深層心理を反映するというが、寝ている間にみるものだけが夢とは限らない。意識と意識のわずかなスキマに、ときおり雲の間から光が差し込むようにしてピシッと雷が走る。
つねに反対側へ。
近くに新しいラーメン屋ができたらしい。今週末に行ってみよう。読みたい本が溜まってきた。家では読書しないのだから、ラーメンを食べたあとカフェに行って本を開こう。
この停滞した生活から遠く離れた場所へ。反対側へ逃げれば「鬱」という悪魔に捕まることもないだろう。