
安部公房『砂の女』再読。読んだのは5年くらいまえだ。
覚えていないシーンもあったし、途中のストーリーも間違って記憶していた。
砂丘へ昆虫採集に出かけた男が、砂穴の底に埋もれていく一軒家に閉じ込められる。考えつく限りの方法で脱出を試みる男。家を守るために、男を穴の中へひきとめておこうとする女。そして、穴の上から男の逃亡を妨害し、二人の生活を眺める部落の人々。
この小説のいちばん印象的だったのは、主人公の男の心情がリアルに描かれているところ。人の心の動きが機敏に記されている。その小さな心の揺れがあるなかで、少しずつ危険な方向へ傾いていく。それこそ砂丘を砂が転がっていくように、じわじわと、わからないくらいの速度で。
はじめは閉じ込められたという事実に腹を立てる。でもそのうちにいつしか順応していき、さいごにはささやかな生きがいを見つける。そこに甘んじてしまうというエンディング。
恐怖ともいえるような、人間の環境への適応が1冊に込められていた。
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