居酒屋。仕事終わりに弟と行ってきた。
久しぶりに飲んだのでけっこう酔った。
お酒を飲むので電車で向かった。
車内アナウンスを聞いて、「都会の生活を思い出す、懐かしくて安心する」と話した。一方で弟は、「嫌な思い出しかない」と言った。
満員電車が心底嫌だったらしい。僕もそれは嫌だったけれど、彼はその何十倍も苦しかったのだろうと思う。
そんな彼は社会人になると同時に都会を離れ、縁のゆかりもない田舎で就職した。それから8年ほど経ち、今度は兄である僕が都会で疲弊した。弟を頼り、現在は同じ会社で働いている。
飲んで帰宅し、シャワーを浴びてしばらくぼーっとした。
僕と弟の間に、本当は1人妹がいたと聞く。流産だったらしい。脱衣所で歯磨きをしながら床に座り込み、目の前の白い壁を見つめながらそれを思った。
会ったこともない、生まれることすらできなかった彼女。ぼくらは今日2人で居酒屋に行ったよ。中学生あたりからあまり口を聞かなくなったけど、今はそんな仲になったんだ。生活圏を変え、弟と同じ会社で働いているよ。
弟はなんとか産まれてきたが、君は途中で引き返した。いまどこにいる?わからないけど、今度会ったら語り合おう。