日当たりがいい。恩田陸『蜜蜂と遠雷』を読んでいる。下巻に入った。ピアノコンクールでの死闘、誰が優勝するのかわからずワクワクする。
木々の間からは鳥のなきごえがする。菜の花が揺れて蜜の匂いがする。川がキラキラ光ってまぶしい。モンシロチョウがたくさん飛んでいる。向こう岸では野球部の声援と「カキーン」という音が飛んでくる。
働いていても、働いていなくても、環境の中の自分がポツンと存在していることを感じる。社会の中の自分、自然空間の中の自分。ここに存在することが不思議だし、違和感を感じたりして、おもむろに指を捻って痛くなったりしてみる。あぁ、たしかに感覚がある。そのことに安心感を覚える。夢じゃない、たしかにここにいるのだと。
この世に生きていることが、なんだかすごいことのように思えてくる。その奇跡のうえで、働かなきゃと思ったり、心地よい風を感じて散歩したり、人との楽しいひとときを味わっていたりする。
生きていることがすごい。生きていることのすごさや幸せを最大限に享受したい。味わいたいし、絡め取りたい。
幸せでありたい。
ずっと苦しいからこそ幸せでありたい。